新版ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則

めちゃくちゃ面白かったー。一気に読んでしまった。内容としては営業戦略寄りの、事業戦略の立て方がメインでした。
事業として戦略を作る際には絶対参考にしたい一冊。事業責任者や営業責任者であれば必読。


読書メモです。

ランチェスター戦略とは、第一次世界大戦のとき、イギリスのエンジニアであったF・W・ランチェスター(1868~1946)が提唱した戦争における戦闘の勝ち負けの法則のこと。
この法則は『孫子』でも書かれている「十をもって一を攻めよ」と同じことであり、そこには2つ法則があります。

 【ランチェスター第一法則】

1対1の戦い、単発兵器、局地戦、接近戦に適用
結論 
戦闘力 =武器性能 ×兵力数


兵力数とは量的なこと。営業担当者の数がそのまま当てはまります。営業拠点数や卸・代理店などのディーラーの数、小売店であれば売場面積、飲食店や店舗型サービス業であれば席数。

「武器」とは「ビジネスにおける質」。まず、第一に挙げるべきは商品力。スペックだけでなくブランドイメージや価格や納期、品質を裏づける技術開発力、サービス品質。アフターサービスや保証など。もちろん、営業担当者のスキルなども武器。さらにはこれらを支える情報システムなど。

武器とは数値化しづらい定性的なものなので、全体像を捉えにくい。敵と味方の武器を比較検討し、顧客が選ぶ基準となり得る要素を見ることでKey Success Factorを発見することが可能。
第一法則の結論に至るまでの式で表されているが、武器性能は相手を1とした時にこちらがどれだけ優れているかという形で概念的だが、数値化は可能。

 【ランチェスター第二法則】

集団戦、確率兵器、広域戦、遠隔戦に適用
結論 
戦闘力 =武器性能 ×兵力数の 2乗
※2乗になる理由は1人が全体攻撃をできるため、損害量(=攻撃力)は兵力の2乗分になる

兵力の逐次投入とは最も忌むべき戦法
※実際に過去に起こった戦争のデータからもハッキリ分かる。

⚫︎弱者と強者とは?

弱者とは、競合局面において負けている市場占有率 1位以外のすべての企業 

強者とは、競合局面において勝っている市場占有率 1位の企業

弱者の基本戦略 =差別化戦略 
強者の基本戦略 =ミート戦略(模倣戦略)

弱者の戦い方
→ランチェスター第一法則が適用する戦い方 
→その 5大戦法は「局地戦」「一騎討ち戦」「接近戦」「一点集中主義」「陽動戦」
 
強者の戦い方
→ランチェスター第二法則が適用する戦い方 
→その 5大戦法は「広域戦」「確率戦」「遠隔戦」「総合主義」「誘導戦」

⚫︎差別化について

筆者は「2M + 4P」という切り口を基本に。
 2Mとは ①理念・事業の定義( Mission)と、 ②市場・顧客層( Market)
4Pとは ③商品とサービス( Product)、 ④価格( Price)、 ⑤販路と地域( Place)、 ⑥販促と営業( Promotion)

用途を差別化する、ネーミングやデザイン・パッケージといった付加価値で差別化するやり方もるが、陽動戦(ゲリラ)的ですので、王道に対して詭道と言える。

弱者の王道は、価格競争を避けるために、価格以外の要素(商品・サービス、販路・地域、販促・営業、理念・事業の定義、市場・顧客層)で差別化すべき

簡単にミートされる差別化は差別化ではない
顧客に評価されない差別化は差別化ではない
差別化は掛け算で相乗効果が生まれる
自業界の非常識は他業界の常識
小技も大切だが、信念のない小手先は通用しない

⚫︎弱者の営業によくあるケース

新規開拓は 1社としか取引をしていない企業を最優先候補とすべき。こうした顧客は 1社しか知らず、案外不満をもっている。狙いを絞って現取引先と差別化し一騎討ちで戦えば、勝ち目はある。

だが、一般に営業担当者はこうした顧客は入り込む隙がないといい、取引先の多い顧客を新規開拓候補として考えがち。しかし取引先が多い顧客は取引先を絞ろうとしているもので、簡単には開拓できません。たとえできたとしても三番手、四番手の納入業者として始めることになり、なかなか結果はでない。

▪️戦略の立て方

⚫︎まずはシェアを把握する(戦場の把握)
競合局面ごとのシェアを把握していく。全国区のシェアや出荷数ベースのシェアはデータを手に入れやすいが、競合局面ごとのシェアがわからなければ個別具体的な販売戦略はつくれません。個別シェア、末端シェアを調べる必要があります。結局は企業規模の大小に関係なく、末端のシェア情報を足で集めるしかない。

⚫︎シェアの目標値について

シェアの七つのシンボル目標数値
74%、 42%、 26%、 19%、 11%、 7%、 3%の七つのシンボル目標数値を設定し、シェア目標を立てる際に活用すること。ただし最終的な数値は意思によって決定される。

尚、26%を下回っている 1位企業は原則として弱者の戦略をとり、本来の強者とは区分します。そうした分散型市場はオール弱者である。

⚫︎シェア安全圏について

2社間競争の一騎討ち戦や 局地戦の典型である顧客内の一つの製品カテゴリーのシェア競争の場合…… 3倍のシェア差をつければ安全圏

そのほかの戦いの場合……ルート3 倍(約1.7倍)のシェア差をつければ安全圏

→これは「3対1の理論:3つで1つと戦えば勝率は圧倒的に高くなるというルール」に基づいて算出されている

⚫︎ランチェスター戦略の結論

ナンバーワン主義
1点集中主義
足下の敵攻撃の原則(自分のシェアよりも1つ下を叩く)

⚫︎どうシェアを伸ばしていくのか?

局所戦で1位を取っていくのがランチェスター戦略

ステップ1 商圏・テリトリーの把握

→3Cそれぞれの数値に基づいてデータ収集(需要という分母と各社のシェアや顧客数、チャネル数、売上構成比等々)
→商圏の構造を把握する

ステップ2 顧客マップの作成と商圏・テリトリーの再編成

→ 以上の販売情報、地域情報を調べたら、地図に落とし込みます。商圏・テリトリーの地図を用意し顧客に印をつける。顧客規模の大中小をプロットの大きさ、競争関係では自社が強いのか弱いのか、中くらいなのか、によって色分けするなどの工夫をします。事務機のような買い替え需要がある業種では年次別に色分けしてもよい。

ステップ3 テリトリーの細分化と重点エリアの設定


ステップ4 ローラー調査

重点エリアは自社の命運をかけた勝敗の決勝点。どのライバルよりも自社が精通する必要があります。 重点エリア内顧客(未取引も含めて)を自社で全数調査。全顧客に訪問調査する市場総点検活動のことをローラー調査といいます。代理店、販売店、小売店やユーザーの事業所が顧客になる場合は対象となる先をしらみ潰しに調査します。最低限知りたいことは、エリア内に潜在顧客が何軒あって、各顧客が、どこから、何を、いくら仕入れているかです。これによって正確で詳細なシェアがわかります。

ステップ 5ランチェスター式 ABC分析、カバー率と A a率

ランチェスター式 ABC分析……需要規模 ×顧客内シェアの二軸で格付けする下準備。

ステップ 6構造シェアによるシェアアップ目標と戦略の策定

戦略づくりの切り札となる概念が「構造シェア」であり、カバー率と A a率を足して 2で割った数値です。構造シェアは実際の市場シェアと近似します。
→ここからどこを取れば目標シェアに到達するかのルートを決定。

ステップ 7顧客の戦略的格付けと訪問計画

攻撃(攻略)の方針 
ステップ 5のランチェスター式 ABC分析で、顧客を 12通りに区分。
これを顧客の戦略的格付けといいます。
この格付けに応じた攻撃を行ないます。

攻撃は質と量で考えます。


質とは攻撃方針です。「守る先」「攻める先」「育てる先」「見極める先」に区分し、それぞれで差別化なのかミート戦略なのか等の方針を決める。

次に、攻撃(攻略)の量です。
これは顧客の重要度に応じて、どのくらいの頻度で訪問するのか、そして訪問 1回当たり何分程度滞在するのかという攻撃の量に基準値をつくることです。

⚫︎ランチェスター戦略を導入するとは
「科学的な営業戦略を策定し、仕事の進め方を標準化し、行動計画に落とし込み、行動の予実管理を行ない、成果と課題を検証し、成果の伸張策と課題の改善策を講じる PDCAを回していく」こと

⚫︎ランチェスター戦略を用いて結果を出すために
トップの強い決意表明が必要。中小企業であればオーナー社長、大企業・中堅企業であれば営業の責任者(営業本部長)。これは必要条件です。 突破口は、成功事例づくり。

⚫︎最高と失敗を分かるポイント
ランチェスター成功・失敗の急所は訪問計画・顧客コンタクト計画の予実管理です。
訪問ネタがつきて、顧客も暇ではないのでアポが取りにくくなるものです。
ここで訪問頻度が、いままでどおりの 2か月に 1回に戻れば、失敗に終わります。1か月に2回行き続けることができれば成功します。
このことは営業担当者の問題ではなく、会社全体の問題であると位置付けトップ自らが動き、トップ自らが決定しなければなりません。

解決策は営業担当者だけに訪問活動を任せるのではなく、全社訪問体制を築くことです。
まずは技術担当、製造担当、企画担当といった専門スタッフ部門の投入。次に、営業担当者の上司。年に数回は、総務・経理部門の部門長クラスも投入しましょう。顧客の総務・経理部門同士でコンタクトをとることは有効です。


⚫︎本筋と関係ないが、良いと思った言葉
プロイセンの鉄血宰相と呼ばれたビスマルクはこう言っています。  「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と。





おかむら@マーケター1.0

東京でマーケティングをしているおかむらのブログです。世界一のマーケターを目指して進化していきたいです。 Cyberagent (広告)-> Lenovo (ECマーケ) -> Lenovo (BtoBマーケ) ※発言・発信は個人のもので所属する企業には関係ありません

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